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意思疎通を可能にするトレーニング

犬の賢さはその「行動」で計り知ることができますが、その行動のなかでも特に「指示通りに動く」ということに優れていることは広く認知されているでしょう。最もポピュラーなものでいえば、「お手」や「おすわり」といわれて、期待通りの反応をすることが挙げられます。何かを「指示」して期待通りの反応を示すということは、その行為の意味を自覚するしないは別として、「コミュニケーション」です。飼い主はその指示を言葉や仕草で犬に認知させ、犬はその期待に応えるのです。そのような意思疎通が可能になるのが犬が他の動物を抜きん出ているところでもあります。

犬に何か「命令」を出すためには、まずはその犬が属してる「群れ」、つまり家族の中での上位者であるということをその犬に認識される必要があります。犬は従順な動物ですが、それは「自分と他社の上下を意識する」ことを経由し、その上で自分が「下」だという実感を持った上での従順さです。

ですから、その犬に何か指示を出して意に沿う行動を起こさせるためには、「上下関係」を自覚させる必要があります。その群の中で自分が、そしてその犬が、どのようなポジションにいるのか、それを自覚させるのです。

その上で、どのような指示を出した時に何をすれば良いのかを覚えさせます。犬には当然「言葉」は通じません。「おすわり」と言ったら「座る」ということを覚えさせるのもそう簡単ではありません。それは「おすわり」と言った時に犬が座ったら「褒める」という地道なトレーニングになります。ときには無理矢理座らせて覚えさせるというものです。

ですが、それは言葉で表すほど不毛なことではありません。犬はその状況から自分が何を求められているのかを理解することができます。訓練を幾たびか繰り返すうちに「座ればいいのか」ということを理解します。理解すると、それはずっと忘れません。それだけの知能を持っているのです。

ですから、一般家庭においても犬にさまざまな「しつけ」をほどこすことは十分可能です。むしろ、やたらと人に噛み付いたり、集合住宅などで屋内で飼っている場合はやたらと吠えたりしないようにするため、「しつけ」は大切なことです。

犬とコミュニケーションをとるためには、その「素地」がもっとも大切です。「自分がこの群れのリーダーだ」と錯覚してしまった犬とは、私たちが期待するコミュニケーションは取れません。コミュニケーションの素地とは、犬を絶対的に服従させるようなことではありませんが、飼い主と犬がお互いを信頼できるよう、互いの「領分」をわきまえたものになることが理想的です。

「理屈」は通じませんから、本能と感覚、そして自分の主を「主」と納得していることが大切なことです。そのような状態はすぐに完成するようなものではありません。長い時間をかけて築くものです。「飼っていればなつくだろう」ということは間違ってはいません。ですが犬がその飼い主をどう捉えているのか、ということが問題です。「群」の中であなたは何番目なのか、それを考えてみましょう。

もしあなたがその「群」、つまり家族の中で飼っている犬よりも下位に位置している場合、コミュニケーションは成立しません。それは一方通行になり、犬はいうことを聞きません。愛犬を愛でるだけでは、しっかりとしたコミュニケーションは望めないのです。意思疎通を可能にするトレーニングは、まずはマスターと愛犬の「関係」をつくるところからはじまります。

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