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自分が人間だと勘違いする犬とは

人間とともに暮らす犬は、自然な状態ではありません。もっとも、犬は種として人間と暮らしてきた動物です。関わってきた歴史が長いため、「なにが自然なのか」ということももはや薄れつつあります。人間から餌をもらい、人間の守護のもとで生きることが当たり前となっているのです。そのような犬はその群れ、つまり家族の中での自分の立ち位置をしっかりと見つける必要があります。

「社会性」自体を人間と暮らす中で身につけた犬は、その群れがすべてのそんざいです。日々生活していくなかで他の犬と出会うことはもちろんあります。犬と犬が出会うと、本能で「同種の動物だ」とわかるものです。互いの匂いで互いを確認し合い、コミュニケーションをとることができます。生まれてから人間の中で社会性を身につけた動物でも、それらのことは種としての「本能」として備えています。ですから、いくら人間の中で暮らしても、犬は犬としてしっかりと成長していきます。唯一変わってしまうことがあるとすれば、「群れのなかの立ち位置」です。そして「家族と同じような待遇になりたい」ということです。

犬は飛び抜けて頭のいい動物です。怖い、恐ろしいという記憶はトラウマとしてしっかり頭に残るものですし、その逆で楽しい、嬉しかった、という局面も憶えているものなのです。人間の家族と暮らして行く中で、「禁忌」とされることは少しずつ増えていきます。それは飼い犬に対して、ボスである人間が「叱る」という行為とともに禁じた行為になります。

実は、その「叱る」という行為自体が犬のその群れでの「立ち位置」を定めることになります。同じ群れ、つまり家族と暮らしていても、犬と人間はやはり違います。人間の社会と、犬が認知できる社会には違いがあるのです。「叱る」という行為は、犬が犬であるために生きる範囲を定めてあげることです。言葉では通じませんから、「ここに立ち入っては怖い思いをする」ということを身をもって覚えさせる必要があります。やがてそれが自然になると、犬が自身の生きていく空間をしっかりとわきまえることが出来るようになるのです。

いわゆる「しつけ」です。それが失敗すると、犬が自分の暮らしていく「範囲」というものをしっかりと認知できなくなってしまうのです。「庭に鎖でつなぐ」ということは、その一環です。「犬が逃げないように」ということよりも、その範囲がその犬の縄張りであるということがわかるためのものなのです。

犬は自分で「ここがどこか」などということはある程度認識できるものです。ですが、その環境のなかで自分がどこまで関わっていいのか、遊んでいいのかということはなかなか自分だけでは判断がつかないのです。極端な話が、犬小屋の中敷きと高級な羽毛布団の違いはわかりません。そのため、触ってはいけないものは触ってはダメとしっかりとしつける必要があるのです。

犬に対して、「ボス」であるという立場をうまく確立できなかった場合、そしてうまくしつけができなかった場合、犬はその領分をどんどん拡大していくことになります。その結果、同じ群れのみんなと同じことをしたい、という状態に陥るでしょう。そうなるとまるで「人間」であるかのように振る舞い始めることになります。自分の居場所を定められなくなる、ということが「犬が自身を人間だと勘違いする」ということなのです。

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