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ブリーディングというビジネス

ブリーダーは「職業」です。仕事にすれば必ず「対価」を支払われなければいけません。その対価の原資は、「犬の売買」によるものであることは間違いありません。その犬にどれだけ思い入れがあっても、父親役や母親役として残らない限り必ず去って行きます。新しい飼い主の元で暮らすのです。そして、その犬の譲渡は「金銭」を介して行われることになります。

大好きな犬を「売る」ということ。それがブリーディングの最終到達点です。その到達点をイメージできないブリーダーは半人前です。自分の育てた犬が誰かを癒しながら、誰かと暮らしていく。そのイメージがつかないのであれば、「なんのために育てているのか」ということがわからないままではないでしょうか。

そのイメージはどうやってつければいいのでしょうか。簡単には納得できることではないでしょう。思い入れがあればあるほど納得出来ないものです。そして、不思議と思い入れがなくても納得できないものです。そもそも「ブリーダー」の仕事に誇りが持てないということであれば、その仕事を続けることが難しいのではないでしょうか。ブリーダーとしての「実務」は実に地道なものです。

「大好きな犬と触れ合える」とはいえ、それだけが仕事ではありません。犬たちの健康を維持するにはまずなによりも栄養が必要です。その栄養は犬たちの「食事」によって決まります。その食料の調達ももちろんブリーダーの仕事です。そして犬たちは食べれば「排泄」します。排泄物の処理も必要です。さらにはただ食べるだけではいけません。動物としての本能を満たしてあげる必要があります。運動させないわけにはいきません。

ブリーダーの仕事は、世界中の犬の飼い主が日々行なっていることの規模を広げたものです。その日常の中で、貰い手がいる個体を金銭と引換に手放していくのです。その瞬間のみが、ブリーダーとして収益をあげられる瞬間です。それ以外の時間はすべてが「コスト」です。貰い手がある個体を育てること。それがブリーダーとしてのビジネスのすべてです。

貰い手のある個体を育てることは難しいものです。ですが、「繁殖に失敗した」ということは通用しません。「良くない」と思ってしまう個体でも、生きています。天寿をまっとうするまで生き続けます。命を育むのがブリーダーの仕事の基本です。貰い手がなくても、その犬はずっと生きます。生まれた仔犬はすべてが生き抜く権利があるのです。

すべての犬にすばらしい生涯を用意してあげること。その犬のおかげで救われる人がいるということ。それらすべての責任を負ったうえでビジネスをしなければいけません。ただ繁殖させればいいというわけではありません。それぞれの犬の世話をしながら、引き取り手のある個体を生み出すこと。ブリーダーはビジネスとしてはあまりにも非効率なのかもしれません。

ですからそのビジネスに足を踏み入れる事自体、非常に大きな勇気がいるのです。軽はずみで足を踏み入れてはいけないのです。ブリーダーと犬との関わりすべてがビジネスに直結し、すべての犬の生涯を左右します。それらの自覚がないブリーダーはブリーダーとしては失格です。

犬と人のよりよい社会をつくるための「根幹」を成すビジネス。それがブリーダーです。

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