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計画的な繁殖は難しい

犬は一度の妊娠で数匹の仔犬を産みます。それは自然界の動物では当たり前のことで、動物たちにとっては「成長する」ということが一つの試練ですし、厳しい環境によって淘汰される場合もありますし、それらの苦難を乗り越えて立派な成犬になっていくのです。ですが、現代環境では、そして人間の手によって守られた環境では犬にとってのリスクはなにもないといえるでしょう。ですが、「人が飼う」ことを前提に計画的に改良を重ねられた犬の中には「自然分娩」が不可能な犬種もあります。例えば「ブルドッグ」などは、「帝王切開」が必須です。これは「愛玩犬」として改良された犬種ほど顕著です。

雌犬の発情期は年に2回ほどあります。雄犬に関しては成犬になれば特に発情期はありません。うまく交配させれば、妊娠期間約2ヶ月間で仔犬が誕生します。交配に最適な犬の選定と、適切な交配をアレンジすると、自然に犬は妊娠します。

一番大切なのはその間の母体の体調管理です。この期間の母犬の状態が、生まれてくる仔犬の状態を左右します。当然妊娠してからは摂取させなければいけない栄養の量は増えます。だいたい妊娠期の前半は普段の2割増、後半は5割増ほどの栄養が必要です。また、出産後は仔犬を母乳で育てる必要があります。生まれてきた仔犬の成長の速度はめまぐるしいものがありますから、出産して10日間は妊娠前の約2倍、20日目以降は3倍もの栄養が必要になります。

母体の栄養状態によって、生まれる前、そして生まれたあとの仔犬の状態は変わってきますので、正しいブリーディングは「母体の管理」と等しいともいえます。犬は基本的に自然界にいた生き物ですから、妊娠中も適度な運動は必要です。適度な運動を続けることによって、難産になることを防ぐこともできます。ですが、さすがに腹部が膨れてくるとあまり高低差のある場所などには近寄らせないほうがいいでしょう。物理的な衝撃でお腹の中の仔犬に支障が出てしまうかもしれません。

ブリーダーはその2ヶ月間、常に母体の状態に気を配る必要があります。そして、その取組は常に複数匹に渡ることになります。さらには取り扱う犬種もさまざまですし、必要な栄養量もバラバラです。それらを管理し、それぞれの個体を無事に出産させ、6週ほどは母犬の元で基本的な免疫力などを付けさせる必要があるのです。

ブリーダーの仕事の大半はこれにつきます。犬を調教などはしません。健康を管理しつつ繁殖させ、新たな飼い主の元に送り出すのが仕事です。それぞれの個体の発情のタイミング、そしてどのような組み合わせで繁殖を繰り返すのかという事に至るまで、考える必要があります。

家庭で飼っている犬でも、去勢しなければなにかのタイミングで妊娠と出産を経験するかもしれません。愛犬家の中にはすでに経験したという方もいるでしょう。その状態が「常」にあるのです。新たな生命が生まれるのは喜ばしいことですが、その「生」にタイミングまでアレンジし、健康な仔犬が生まれてくるように仕向けることは生半可なことではありません。そのため、「ブリーダー」は難しい職業なのです。犬の生をアレンジし、常に健康な仔犬を生み出す必要があるのです。

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