banner

 

美しい育て方とは

「美しい犬」の捉え方もさまざまです。品評会やコンテストなどで優勝できるような犬は、確かに相対的に見ると「美しい」のでしょう。その毛並みの色艶、そしてたくましい四肢を育てるために、飼い主はさまざまな努力を続けてきたのでしょう。ですが、それだけがその犬の「美しさ」であるとは限りません。

犬は人間社会と深く関わりを持つ動物です。その歴史も深く、「種そのもの」がすでに人間によって作り上げられたという経緯もあります。そのような経緯がありながら、動物としての本能や習性は失わず、且つ「人の良いパートナー」として存在できる数少ない動物です。やはりその個体の「美しさ」、「素晴らしさ」はその「見た目」だけでは決まりません。その犬の置かれた「環境」や「人との関わり」まで含めて、その「犬」を表すものだと考えます。

それは決して「良いエサ」を与えれば実現することではなく、「高いトリミング」にかかれば実現することでもありません。人との接し方、日々の過ごし方自体が、その犬なのではないでしょうか。つまり「犬との生活」すべてが評価されるべきことだということです。毛並みや体躯を軽んじるわけではなく、健全な精神を備え、且つその家族、その地域とより良く関わる個体、それを実現できているマスターが、賞賛されるべき存在なはずです。

より良い毛並み、より良い体躯は、「手間」とそれに見合う個体が揃えば実現が出来ることです。確かに、毛並みが美しく育つような「遺伝子」は限られたものなのかもしれません。そのような個体に価値を見出すことも多いのかもしれません。ですが、「人や社会との関わり」は、金銭や遺伝子の問題ではありません。いくら毛並みが綺麗な犬であっても、その鳴き声で近隣に迷惑をかけていたり、マスター、つまり飼い主と確固とした関係を築けていなければ、その「育て方」は美しくはないのです。

犬は社会性を持つ動物です。その社会性はもちろん本能として生まれ持ったものでもありますし、種として持ち合わせた高い知性が実現させるものでもあります。ですが、その「素養」を活かすのか殺すのかは、その飼い主次第なのです。人間と犬、自身と愛犬の関係を見失い、品評会のためだけに犬を育てるような人がいます。そのような人も「ブリーダー」なのかもしれません。たくさんの実績を持ち、立派な遺伝子を育てているのかもしれません。ですが、愛犬との関係を見失ってしまうのはよくありません。

犬と飼い主の理想的な関係は、「遺伝子」とは関係がありません。それは「実践」するものであり、「育む」ものです。どのように育てるのか、ということは、「どのような関係でいるか」ということです。それを度外視したような関係は美しくはありません。犬は決して幸せではありません。

自身の犬が「相対的にどうか」などということは、等の犬「本人」にしてみれば関係がありません。健やかに、飼い主であるあなたと理想的な関係で静かにくらしていければいいと考えているのです。毛並みが綺麗であろうと、体躯が立派であろうと、健やかに過ごせていなければ、それはいつかは 表面に出てきてしまいます。高級トリマーでも隠せないその「淀み」は、遺伝子的なものではなく環境が生み出すものなのです。

Copyright(c) 2012 ブリーダーとは All Rights Reserved.